最近「睡眠負債」という言葉を知ったので、今回は「睡眠負債」について書いていきます。
「睡眠負債」は約50年前にスタンフォード大学のウィリアム・デマンドが提案した睡眠に関するアイデアです。毎日の睡眠不足を借金のように例えた表現で、毎日の睡眠不足が借金のように少しづつたまっていくと、やがて債務超過になり様々な疾患を引き起こすというものです。
この「睡眠負債」の考え方は、その後の多くの臨床試験でその正しさが証明されています。
この「睡眠負債」の怖いところは、自分が気づかないうちにどんどん負債がたまっていくことです。
「睡眠負債」は休日に寝だめしているから大丈夫!
と考えている人もいるかもしれませんが、寝だめは体内バランスを崩してしまうので、逆に「睡眠負債」を貯めてしまうことになってしまいます。
では、「睡眠負債」を解消するためにはどうすればよいのでしょうか?
まずは睡眠不足で引き起こされる病気についてみていきましょう。
「睡眠負債」は様々な病気を引き起こす
さて、睡眠不足で「債務超過」になってしまうと、どのような症状が出るかと言うと(1)
睡眠不足で引き起こされる主な症状
・肥満
・糖尿病
・心疾患と高血圧
・不安障害
・抑うつ傾向
・アルコール依存
などの症状が出ると言われています。やはり睡眠不足は怖いですね。
なぜこのような症状が出てしまうのかというと、睡眠不足で日中のストレスを完璧に回復することができなくなってしまうからです。
私たちが眠りにつくと、脳は45~60分以内に休憩状態に入ります。そして、損傷した細胞の修復、骨や筋肉の成長、免疫システムの調整など様々な作業を行います。そして1~2時間後にはレム睡眠に入り、大脳が活動を開始します。その間に日中の間に獲得した情報の処理が、大脳と海馬の間で行われるのです。つまり、海馬と大脳との間で情報の取捨選択が行われて、記憶の定着が行われているのです。
さて、睡眠不足が続いて「睡眠負債」がたまってしまうと、私たちが脳や体の調子を整える時間は無くなってしまいます。結果として処理されずに残ってしまった疲労感やストレスが、「負債」のように私たちの体をむしばんでいくのです。
睡眠不足と肥満が関係しているのは睡眠不足によって体内のホルモンバランス(特に視床下部ホルモンのバランス)や交感神経系が乱れてしまって、食欲が増幅してしまうからではないか、と考えられています。
良質な睡眠を取っているのかどうかを判断するために
「睡眠負債」を解消する方法はただ一つで、「良質な睡眠」を確保することです。
しかし、先ほども言ったように、「睡眠負債」は自分が睡眠不足だと気づかないうちにどんどん増えてしまいます。そのため、「睡眠負債」を返済するためには、まずは自分が良質な睡眠をとっているのかどうかを判断する必要があります。
「良質な睡眠を把握するためにどうすればよいのか」ということを調べたスタンフォード大学の研究(2)では、以下のようなことを良質な睡眠の判断基準にすればよい、との結論付けがなされています。
良質な睡眠のサイン
・横になってから30分以内に眠りに落ちることができる
・夜中に起きてしまう回数は1回まで
・夜中に起きてしまった場合でも、20分以内にム一度眠ることができる
・睡眠時間の合計の85%以上を寝床で使っている
(通勤時間での居眠りや昼寝の時間が、総睡眠時間の15%以下である)
皆さんもこれらのサインを自分が良質な睡眠な睡眠をとっているかどうかの判断にしてください。
理想的な睡眠時間はどれくらいなのか?
さて、睡眠時間はどれくらいがよいのか?ということに疑問を持つ人もいるかもしれませんので、その疑問にお答えしておきます。
平均的には睡眠時間は7時間が理想だと言われています。
また、睡眠時間は短すぎても、長すぎてもだめだということがわかっています。
参考に以下のデータをみてください。睡眠時間と死亡率の関係を比べたデータです(1)。縦軸が死亡率、横軸が睡眠時間です。健康に最もよい睡眠時間が7時間で、睡眠時間は短くても、長くてもダメだということがわかると思います。
睡眠時間と死亡率の関係
しかし、世の中には「ショートスリーパー」という睡眠時間が4時間程度でも大丈夫だという人と、「ロングスリーパー」という10時間程寝ないとダメだという人が世の中の10%程度います。
睡眠時間が6~7時間程度必要な人は、「ミドルスリーパー」と呼ばれて全体の90%を占めます。
ここで伝えたいことは、睡眠時間にはかなりの個人差があるということです。
しかし、健康的な生活を送りたいのであれば、7時間程度の睡眠時間を取る必要があるということを科学は証明しているので、自分にあった睡眠時間を6~7時間で探してみるとよいと思います。
ちなみに私の睡眠時間は6時間ですね。
参考
(1)Sleep Disorders and Sleep Deprivation: An Unmet Public Health Problem (2006)
(2)Maurice Ohayon et al. (2017)National Sleep Foundation's sleep quality recommendations: first report