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医学的知識 読んだ本紹介

なぜ遺伝子で病気になるの?~迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか の内容まとめ~

投稿日:2018年10月14日 更新日:

「迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか 」の各章の要旨や全体のまとめです。

メタ認知読書に従って、内容を理解するための質問事項を最後に追加しています。

 

「なぜ病気を引き起こすような遺伝子が残っているのか?」という疑問を出発点として、ヒトの進化と病原体や遺伝子などの関係性を詳しく、分かりやすく述べてくれている名著です。

作者は神経遺伝学、進化医学、人間生理学の分野で博士号を取得しており、広範で興味深い、ヒトと他の生命体がともに起こしてきた進化について知ることができます。

医学や遺伝子学、進化医学に興味がある人に、かなりオススメな名著です。


迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか

目次

全体のまとめ

「なぜ病気を引き起こす遺伝子が残っているのか?」

この疑問の答えは、「病気を引き起こす可能性があるが、それ以外のその病気よりも重篤な病気を予防するため」である。

生命の一番の目的は子孫を残すことであり、生殖可能年齢まで生き残ればよいわけで、進化はヒトに生殖できるまで生き残ることができるような仕組みをもたらした。

また、進化とは他の生命体との共同で引き起こされるものであり、他の生命体が存在するからこそ、日々できる限りのスピードで生物は進化している。

ヒトもその例外ではなく、病原体、植物、食生活などの生活様式や生活環境、などの要素によって、進化を繰り返してきた。エピジェネティックスという遺伝子の発現様式の変化が存在するのも、進化の一種だと捉えることができる。

 

進化は妥協的だが、その分魅力的である。

「なぜヒトはこのような形で存在しているのか?」

進化の疑問に答え続けることは、いつかきっと多くの病気を治す手がかりになるだろう。

そのために「なぜ?」という疑問を忘れてはいけない。

 

本の書評・レビュー

「冒険とロマンに満ちたメディカル・ミステリーツアーへ、ようこそ」

このような一文でこの本は始まる。

 

「なぜ病気を引き起こすような遺伝子が残っているのか?」

「気候変動と人間の進化の関係性は?」

「肌の色の違いはなぜ生まれたのか?」

「植物に含まれている化学物質をヒトはどのように利用するのか?」

「ウイルスなどの伝染病には、症状が重いものと逆に軽いものが存在する理由はなに?」

「日々の行動が子孫に影響を残すって本当?」

などの疑問に答えてくれる。

本当にわくわくしながら読むことができ、久しぶりに知識欲を刺激されるような本に出会った。

 

「冒険とロマンに満ちたメディカル・ミステリーツアーへ、ようこそ」

というこの本の書き出しは、嘘ではなかった。

 

この本では「なぜ病気を引き起こすような遺伝子が残っているのか?」という疑問を出発点として、ヒトの進化と病原体や遺伝子などの関係性を詳しく、分かりやすい口調で述べてくれている。

筆者が読者に興味を持たせるために、読者に疑問を投げかけるなどの工夫がされているので、飽きずによむことができる。

広範で興味深い、ヒトと他の生命体がともに起こしてきた進化について知ることができる名著。

医学や遺伝子学、進化医学に興味がある人は一読することをオススメする。

 

この本の内容や要旨などは以下を参照(2018/10/14公開予定)

https://wp.me/p9Cd8y-Dv

各章の要旨まとめ

はじめに

ヘモクロマトーシス:鉄が蓄積する遺伝病で、アルツハイマーと関係がある

遺伝子プール:その種全体が保存する遺伝子の総体で、基本的には生存に有利に働くような遺伝子だけが遺伝子プールに蓄えられていく。

人間と人間以外の植物やウイルスまで含めた生物はどのようにして相互に影響を与えながら進化して帰化のか?をこの本では解き明かす。

人間は無数の生物と共存している

進化はその種単体で引き起こされるものではない。進化とは、無数の生命が自身の生存と種の保存の確立を高めるために引き起こされる前進であり、ある種が進化すると、その他の種に進化を促す圧力がかかることになる。

突然変異とは単なる変化のことであり、変化の結果がよければ生き残るし、結果が悪ければ自然淘汰される。そして良い、悪いはそれぞれの生物の主観的立場に依存する。
(抗生物質耐性菌の出現は菌にとっては良い進化であり、人間にとっては悪い進化である)

 

1章

ヘモクロマトーシス:体内の鉄代謝を乱す病気であり、常に鉄を吸収して体内に蓄積してしまう病気。
この病気は浸透性の低い病気だとされる。

浸透性とは「特定の遺伝子を持つ個体のうち、その遺伝子が発現する頻度」のこと

生物にとって鉄は必須の栄養素で、鉄が多く存在する海には植物プランクトンが大量に発生する

人間にとって鉄は必要不可欠な栄養素だが、人間の体内の鉄を使って細菌、ウイルス、寄生虫が繁殖することもある。

テトラサイクリン(抗生物質)と細菌を入れたペトリ皿に各種栄養素を加えると、鉄を加えたペトリ皿だけ細菌が大繁殖していた。

成人の体内には3~4グラムの鉄が存在し、そのほとんどはヘモグロビンに保持されている。

人間の開口部(口、耳、目、性器など)の体液(涙、唾液、粘液など)にキレートが多く含まれているのは、キレートによって鉄を細菌とウイルスが使えないようにするため。

人間の免疫機構である急性期反応では、血流に病原体と戦う免疫細胞が表れると同時に、鉄が封じ込まれる。

癌細胞は増殖に鉄を使う

卵白はキレート剤が詰まっていて、卵黄を細菌から守っている。

母乳にはラクトフェリンという細菌に鉄を使わせないキレートタンパクが含まれている。

腺ペスト(菌)は人間のリンパに入り込み、ひじや鼠径部のリンパを腫らす。そして腫れたリンパが皮膚を突き破る。ペスト菌が肺に感染すると肺ペストとなる?

14世紀のペストの大流行の際も、ユダヤ人にはあまりペストが広がらなかった。
その理由は「過超(すきご)しの祭り」という習慣があったから。
過超(すきご)しの祭りでは、穀目備蓄を一掃する

ペストを媒介するマウスが寄ってこない

ペストの感染ルートは、ネズミ→ネズミの血を吸ったノミ→人間

そして体内に鉄分を富む人口集団ほど、ペストの被害を受けている。
特に健康な成人男性が被害を受ける。
(子供、老人は栄養不足で、女性は月経や妊娠で、体内の鉄が不足していた)

健康な人のマクロファージには鉄が多く含まれているが、
ヘモクロマトーシスの人のマクロファージには鉄がほとんど含まれていない


マクロファージに取り込まれた病原体は、マクロファージ内の鉄を使って繁殖することがある
(ペスト菌がマクロファージに取り込まれると、マクロファージ内の鉄を使ってペスト菌は繁殖する。結果としてリンパは腫れあがる。)
つまり、ヘモクロマトーシスは鉄の異常蓄積によって数々の障害を引き起こす一方で、
病原体の体内、特にマクロファージ内での繁殖を防いでいる。

創始者効果:遺伝子変異を起こした個体が、集団が隔離されている、もしくは集団の数がすくないために集団内で近親交配を繰り返すことによって、遺伝子変異が致死的な症状を出さない程度まで拡大する。

ヨーロッパでヘモクロマトーシスを発症する人が多いのは、ペストの流行を生き残るためにヒトが変異したから。
(たとえヘモクロマトーシスによって中年期以降に死ぬことになっても、それまでに子孫を残す)

瀉血(しゃけつ):史上最古の治療法の一つ。3000年前のエジプトにまで記録が残っている。19世紀にピークを迎えた。

1世紀のギリシア人医学者ガレノス「血液、黒胆汁、黄胆汁、粘液の4種類の体液説」

あらゆる病気はこの4種の体液から生まれるのだから、絶食や胃腸の浄化、瀉血で体内バランスを整えるという発想になった。

瀉血(しゃけつ)=静脈切開
静脈切開は全ての病気に効くわけではないが、ヘモクロマトーシス、心臓病、高血圧、肺水腫などには効くかもしれない。

血を抜くと動物の体内でパソ(ヴァソ)プレシンというホルモンの分泌が促され、体温を下げて、免疫機能を活性化させる。(ヒトでは示されていない)

そもそも瀉血という行為が広がった理由は、瀉血に何らかのプラスの効果があったから。現代医学が見捨てた昔ながらの慣習は、それ以外では救うことができない人を救ってきたということ。現代医学は理解していないことの方が多い。

貧血のおかげて、鉄不足のおかげて感染症にかからないことがある。

ボツリヌス菌症を発症する乳幼児は、母乳ではなく鉄を添加されていた乳を飲んでいた。

嚢胞性線維症は全身の分泌液/粘液が著しく粘稠となり、管腔が閉塞し感染し易くなる病気。主に肺病になって若くして亡くなる。CFTR遺伝子のホモ変異によって引き起こされる。
が、ヘテロ変異(保因者)では結核にかかりにくい。

 

2章:糖尿病は氷河期の生き残り?

(真性)糖尿病は、体内のインスリンの分泌量が少なくなり、血糖値が高いままになる。そして血管障害が引き起こされて、様々な病気になる。

1型:若年性糖尿病(インスリンを分解してしまう、自己免疫疾患の一つかもしれない)
2型:成人型糖尿病と呼ばれるが、肥満児の子供が発症するケースが多くなっている。
インスリンの産生量が少ないために、血糖値の上昇がみられる。
妊娠糖尿病:妊娠中の女性にのみ見られる糖尿病。巨人症と呼ばれる赤ん坊が生まれることが多く、母体の血液中の余分な血糖が胎児に移される。

2型糖尿病には遺伝が大きく関わっているが、基本的に85%が肥満。
1型糖尿病は北欧で多く見られる。

17世紀に1世紀の間寒冷期があった(小氷期)
(ストラディバリをはじめとするヨーロッパの一流のバイオリン製作者は、寒冷期の密度の濃い木を使ったからこそ、素晴らしい音色を世に送り出した。)

斉一説:気候変動は急激には起こらない、(千年単位)という説
だが、この説は1950年代に崩れ始めた。
そして1980年代には気候変動は100年単位でおこるとされた。
が、1990年代には気候変動はたった数十年で起こることが分かった。
(最後の小氷期『ヤンガードリアス』はたった3年間だけ継続したし、その小氷期への移行は10年しかかからなかった)

このたった3年のヤンガードリアスによって、多くの生物が淘汰された。

ヒトの寒さに対する反応は以下
1.震える:動きによって糖を消費して熱を生み出す
2.毛細血管を閉じて熱の流出を防ぐ。そのため末梢(手・足)は死ぬことが多い
3.ルイス波(狩猟反応):抹消に血液をいきわたらせるため、短時間の間毛細血管が拡張してすぐに閉じる。このルイス波(狩猟反応)はイヌイットなどの一部の寒冷な環境に適応できたヒトしかできない。

褐色脂肪細胞に届けられた糖は備蓄されることなくすぐに熱に変換される。
そのため運動をすることなく熱を生み出すことができる(非身震い性熱産生)
(ちなみに褐色脂肪細胞を体内にためるためには、極寒の地で数週間過ごさなければならない)

寒さで尿意を感じる理由
1.末梢血管が閉じたことによる、体内部の圧力の上昇
2.体内の水分が結晶化することによって血管などを痛めつけることを防ぐため
(アイスワイン、霜にさらされたブドウの糖度は18~28で、普通のブドウの糖度0~3)
(氷の結晶は混じりけのない水からしかできず、混ざっているほど評点は低下する。)
(糖が不凍剤として使われている)

寒さに対抗するために水をすてて、糖濃度を高める→糖尿病に遺伝的要因がある理由

糖濃度を高めることができるような変異を起こした個体が生存しやすかった。創始者効果も働いて、糖濃度を高めることができる個体が増殖した。

アフリカアマガエルは寒さに対抗するために脂肪を蓄えて冬眠するのではなく、完全に凍結して生命活動を停止させる。

アフリカアマガエルは寒さを感じると水分を腹部に集め、肝臓からブドウ糖と糖アルコールを大量に放出して血糖値を100倍にすることで、凍結による損傷の被害を押さえる。また、凍結中にフィブリノーゲンを絶えず作り出すことで、凍結後の傷を急速に修復する。

褐色脂肪細胞は体内の上昇した血糖を下げるために役立ったのかもしれない。

また、ラットを極寒状態におくと、ラットの体は自身が作り出したインスリンに反応しなくなる。
寒冷地では寒い季節ほど新規の糖尿病の診断件数が上がる
1型糖尿病と診断される小児患者は晩秋に最も多い?
冬季に脳卒中が増えるのは、血液中のフィブリノーゲンが上昇するから?
血糖値は寒い季節に上昇し、暑い季節に下がる。

進化はすごいが、完璧ではない。進化は妥協である。

極寒の環境に適応している植物や微生物の研究からも新薬が生まれるかもしれない。

 

3章:コレステロールは日光浴で減る?

太陽光はビタミンDを合成して、ビタミンB9(葉酸)を破壊する

ビタミンDは健康な骨の維持に必要で、欠乏すると大人は骨粗鬆症に、子供はくる病になる。
また、ビタミンD不足は心臓病、関節炎、精神疾患、がん、糖尿病などを引き起こす。

そしてビタミンDは体内のコレステロールから合成される
コレステロールは
・細胞膜の維持
・エストロゲンやテストステロンなどのホルモンの材料
などに用いられる。

B領域の紫外線(BVD)がコレステロールをビタミンDに変化させる。

そのため、冬場にはコレステロール値は上昇し、紫外線予防はビタミンD欠乏症を引き起こした。

また、日光浴(日焼け)はビタミンD欠乏によって引き起こされる病気の治療に用いることができる。
(クーロン病では帳に炎症が起き、ビタミンDなどの栄養素を吸収できなくなる。そのため、クーロン病の患者には日光浴や日焼けサロンでビタミンD値を改善しようとさせる動きがある。)

葉酸は細胞増殖、特にDNA複製に関わっている。
そのため、胎児期、特に神経管の形成に葉酸は必要。
神経管に異常がある子供を産んだ妊婦は日焼けサロンに通っていた。

肌の色は進化の適応例で、肌が黒いほど葉酸の喪失から身を守ることができる。
(メラニンの種類と量によって肌の色は決まる。
メラニンには赤もしくは黄のフェオメラニン茶または黒のユーメラニンの二つがある。
アフリカ人のメラノサイトは白人の数倍のユーメラニンを作っている)

下垂体は日光を感知するとメラノサイトにメラニンを作り出すよう指令を出す(日焼け)
だが、下垂体に伝わる日光の刺激は目から入る(視神経から入る)ので、サングラスをかけているとメラニンが正常に産生されない。

人類が毛を失うにつれて、紫外線に皮膚がさらされることが多くなり、葉酸不足になることが多くなった。そのため、肌の色が濃く変化する、という進化を遂げた。
しかし、人類が太陽光の弱い北部にすむようになると、逆にビタミンD欠乏症になった。結果として肌の色は淡色になった。

(白人は黒人の突然変異:ユーメラニンを大量に作り出す能力の欠如)

赤毛はユーメラニンの産生能力の低下によるものなのかもしれない。

イヌイットの肌が白くない理由は、ビタミンDを摂取できたから。
主食である脂肪分の多い魚にはビタミンDが豊富に含まれているから。

濃い肌をした人々には、アポリポタンパクE(体内を流れるコレステロール量を増やす)の働きを活性化させるApoE4という遺伝子が備わっている。そのため、肌の色が濃いことによって紫外線が少量しか体内に入ってこなくても、ビタミンDを十分に産生できる。

また、白人にもわずかな紫外線量を利用するためにApoE4が備わっている。

が、アポリポタンパクEなどのコレステロールを高まるものは、心臓病、脳卒中、アルツハイマーのリスクを高める。

光くしゃみ反射は、特定の遺伝子をもった集団にしか見られないが、人類の祖先が洞穴で暮らしていた時に、朝にくしゃみをすることによって、花や口に夜に住み着いたカビや微生物を追い出すことができた、という点で生存に有利だった?

アルコール紅潮反応:アルコールを飲むと心拍数が上がり、体温が上がり、顔が赤くなるが、特に顔が赤くなること。アジア人の約半数に見られる。

アジア人の多くは「ALDH2-2」というアセトアルデヒド脱水酵素の力が弱い遺伝子を持っている。
アセトアルデヒドはアルコールの約30倍の毒性をもち、紅潮反応などを引き起こす。

また、ALDH2-2変異型を持っていると、一口酒を飲んだだけで吐き気に襲われる。

昔の人はきれいな飲料水を確保するための手段として以下の2つを考えた
1.水を発酵させる。発酵によって作られたアルコール飲料は微生物を殺し、水にアルコールを加えるだけでも殺菌効果がある。(ヨーロッパ)
2.水を沸騰させて沸かしてお茶を飲む。(アジア)

ヒトの体は母乳を常食にすることをやめた時期から、乳糖を消化する酵素を作らなくなる。
乳を飲むことができる大人は、祖先が常に乳を食べなければならなかった、ミュータントだと解釈できる。

肌の色などの外見から人類の集団を分析するよりも、遺伝子型の分析を通じて人類集団を分析したほうが良い。

「特定の人類集団は特定の遺伝的遺産を共有しており、その遺伝的遺産はそれぞれの人類集団が暮らしてきた環境に適応するような淘汰圧を受けた結果である。」

人は常に自分が属している集団とは別の集団に属している人と子孫をつくることに熱心であり、全体としての人類ははるかに複雑に遺伝子が混ざり合っている。

淘汰圧は1世代や2世代でその遺伝子を完全に消し去ってしまうほどに強烈。

アフリカ系アメリカ人が高血圧になる確率が高いのは、奴隷貿易によって塩分を体内に保持できるような人間が生き残ったから?

集団間での発症率や死亡リスクの違いが存在する理由は、個人の生活習慣によって大きく影響を受けるので、進化の立場から遺伝子的な相違を考えた方がよい。

薬理遺伝学:遺伝子の違いが薬理作用にどのような影響を与えるのか、を研究する分野

CYP2D6:薬物代謝に関わる遺伝子
CYP2D6が少ない人は「薬物代謝が遅い人」であり、白人には10%、アジア人には1%存在する。
また、CYP2D6を13個以上持っている人は「薬物代謝が速い人」であり、エチオピア人の29%、白人には1%存在する。

以上の薬物代謝の速度の違いは、その集団が暮らす環境の中での相対的な毒性に関係している。
つまり、有害な毒が多く存在する環境では、速く毒物を代謝できるような淘汰圧がかかった。

CCR5-Δ32はHIVが細胞に侵入することを阻止する。
CCR5-Δ32は1個もっているだけで、HIV感染に強力な抵抗を示すが、2個持っていた場合はHIVにほぼ完全に打ち勝つ。

淘汰圧や当然変異は40年程度で、急速に加わると考えるべきかもしれない。

 

4:ソラマメ中毒はなぜ起きる?

火のない所に煙は立たない。
医学的な状態がなければ民間伝承や治療は生まれない。

ソラマメ中毒症は世界でもっとも広まっている酵素欠損症で、約4億人の人々が受け継いでいる。
最悪の場合急性の貧血を起こして死に至る。

フリーラジカル:「母なる自然はなにかとペアにしたがるお見合いおばさん」
ペアになっていない分子をもつ電子や分子のことで、対になる相手を求めるために妙な反応を引き起こす。

活性酸素はフリーラジカルと同じような作用を示す。
G6PD:ブドウ糖ー6-リン酸脱水素酵素は赤血球をフリーラジカルや活性酸素から守る

ソラマメに含まれているピシンとコンビシンという糖質物質は、活性酸素(過酸化水素)を作り出す。
結果としてソラマメ中毒の人(G6PD遺伝子欠損)は、赤血球を破壊されて、(溶結性)貧血を起こす。

G6PD遺伝子はX染色体上に存在しているので、男性の方がリスクが高い。

ソラマメが昔から栽培されてきた地域(北アフリカ、地中海、南ヨーロッパ)にソラマメ中毒は多い。

植物は自分の葉や茎を守るための機構、とげや毒性のある化学物質を持っていることが多い。
(タピオカのもとになるキャッサバには、青酸カリのもとになる化合物が含まれている)

クローバー・サツマイモ・大豆はどれもフィストエストロゲンという化合物を合成している。
フィストエストロゲンは動物の性ホルモンであるエストロゲンと同じような作用を示し、動物の性ホルモンを乱す。結果として生殖機能が狂わされる。

また、経口避妊薬(ピル)はヤムイモに含まれていたフィストエストロゲンから合成された。

インディアンベッチは神経毒を持っている。

ナス科の植物は、動物や昆虫にとっては毒になるアルカロイドを含んでいる。
アルカロイドはヒトにとって薬になったり、幻覚を引き起こしたりする。

トオガラシに含まれるカプサイシンはヒトなどの哺乳類にとっては毒だが、鳥類は何も感じない。
カプサイシンは水で簡単に分解されないので、哺乳類の粘膜にしつこくこびりつく。
カプサイシンは熱感を引き起こすだけでなく、神経細胞を壊すという示唆がある。

平均して人間は毎年5000~1万の植物性の毒素を摂取している。
癌による死亡の約20%は植物に含まれている毒ではないか?とも言われている。

では、人間にとって有害な植物をなぜ食べ続けるのか?

ロンドン大学、デゥーク大学、ドイツ人間栄養研究所の共同研究によると、人間が苦みを感じるようになったのは、植物の毒素を食べないようにするため。

味覚への人の反応の仕方は様々で、
超敏感舌と呼ばれる、味覚への反応が以上に敏感な人は4人に1人いると言われている。

セロリはソラレンという物質を作って自身を守っており、ソラレンは紫外線への感受性を高めて、DNAや組織を傷つける。ヒトは皮膚炎になる。
そして、セロリは自身が傷ついていることに気が付くと、通常の100倍の速度でソラレンを作り始める。
(無機栽培でセロリは農薬を蓄えるが、有機栽培でセロリは天然の毒物を蓄える。)

G6PD酵素欠損症はソラマメ中毒症よりも致死的な何かに対して有利に働いている。
つまり、マラリアに対して有利に働いている。
鎌状赤血球やサラセミアよりも強力にマラリアの予防につながっているのがG6PD欠損で、マラリア原虫はG6PDを欠損している赤血球を好まない。(原虫の繁殖サイクルが乱れるから)

ソラマメから悪影響を受けるにも関わらずマラリア流行地域の人々がソラマメを栽培し続けたのは、ソラマメに含まれる活性酸素によって赤血球が壊される一方で、マラリアの予防につながったから。

瘴気:多くのよどんだ水、湖や沼地、湿地などから発せられる蒸気のことで、病気を引き起こす原因だと考えられてきた。

集団遺伝学:特定の集団に顕著な遺伝形式は、それぞれの環境がそれぞれの集団に淘汰圧をかけた結果である、という理論のもとに形成される学問(J.B.S.ホールデーン)

モルヒネはアヘンから作られている。アヘンは古代ギリシアから使われており、ケシを切った時に出される白い液がアヘン。

植物の毒は複雑すぎてよく分からない。
植物の毒の多くは有益であり、毒の仕組みを理解して上手く利用していくしかない。

大豆などに多く含まれるフィストエストロゲンは不妊症を引き起こす一方で、前立線がんを予防して進行を遅らせる。また、更年期障害を緩和するという報告もあり、アジア人女性が更年期障害に悩むことが少ないのは、このためだとされる。

唐辛子に含まれるカプサイシンは劇的な痛みを伴うが、幸福感を上昇させるエンドルフィンの分泌を促すため、ストレス解消などに役立つ。また、25%も代謝速度を高める。さらに、関節炎、帯状疱疹などあらゆる痛みを緩和する。

セロリに含まれるソラレンは皮膚炎を引き起こす一方で、乾癬(慢性の皮膚炎)患者にとっては有益になる。

ニンニクに入っているアリシンは血栓を作りにくくさせるので、脳血管障害のリスクが低下する。

アスピリンはもともとヤナギの樹皮に備わっている虫を寄せ付けない成分から作られた。熱を下げる、痛みを抑えるなどの万能薬になっている。

地球上の60%以上の人々は、植物をそのまま薬として使っており、各地の伝統料理や民間療法がなぜ存在するのか?を考えてみるとおもろいかもしれない。(瀉血(しゃけつ)=静脈切開の例)

 

5章:僕たちはウイルスに操られている?

メジナ虫は人類を長年の間苦しめてきた寄生虫。
ヘビ使い座のアスクレピオスの杖に巻き付くヘビは医学のシンボルとされているが、もともとは大昔の医者がメジナ虫を棒に巻き付けて体内から取り出す姿なのではないかとされている。

人間も、人間に感染症を引き起こすものも、どちらも進化を続けてきた。
現在のヒトの体はお互いに利益になるような微生物やウイルスによって形成されたと言っても良い。

人の体内に存在する微生物の数はヒトの細胞の数の約10倍、微生物全体の遺伝子だとヒトの遺伝子の100倍以上になる。

腸内細菌は有害な細菌の繁殖を防いでくれている。

プロバイオティクスも寄生生物の一種だが、はヒトに必須の鉄を好むのではなく、鉄以外のコバルトやマンガンを好むので、ヒトの栄養を奪わない。腸内細菌と人間はその意味で共生している。しかし、メジナ虫などの寄生虫は宿主を自身のために利用するだけで、悪影響しか与えない。

メジナ虫が酸を吐き出し、その炎症を抑えるために宿主のヒトが水辺に行くように、寄生虫は宿主を操っている。

自然界には寄生生物が宿主の行動を操る例が多く存在する。ほとんどの場合、寄生生物が子孫を残せるような行動を宿主に取らせる。また、寄生生物の生存のための最も大きな問題は、次の宿主に移動するまでの移動方法や移動期間。(中間宿主の存在意義)

ウイルスや細菌も宿主を操るような能力を持っている。
狂犬病ウイルスは、口で繁殖し、唾液と共に外に放出される。また、犬の脳内のホルモンバランスを狂わせて、犬をより興奮させて、攻撃的にさせることで、新しい宿主に感染する。まさに「口角泡をとばす」

トキソプラズマ・ゴンディ:高温生物のほぼすべてに感染する寄生生物。人間の約半分は感染している。
感染経路:宿主のネコ→糞→動物
トキソプラズマが感染したネズミは動きが遅くなり、猫を怖がらなくなる。

トキソプラズマは基本的に人には害を与えないが、HIVのように免疫機能が弱っているヒトは合併症を引き起こす。
合併症:心不全、肝不全、脳炎、失明、統合失調症など
(トキソプラズマに感染したマウスに統合失調症の治療薬を与えると、マウスの行動に変化がみられる。)

トキソプラズマがマウスに行動の変化を起こしているように、ヒトにも何らかの変化を起こしている?
トキソプラズマに感染したヒトの特徴
男性:身なりに気を遣わず、一人ぼっちでいることが多く、喧嘩好き。疑い深く、嫉妬深く、ルールに従うことを嫌う
女性:おおらかに振舞い、友人が多く、見た目を気にする。しかし、信用できないところがあり、異性関係を多く持つ。
(まあ、半数が感染しているので、どうでもよくね?)

ウイルスや細菌がヒトを操っている、という視点での研究は始まったばかり。

コレラが下痢を引き起こすことや、風のウイルスがくしゃみを引き起こすことは、ヒトの病原体に対する反応ではなく、ウイルスが自らの生存のために宿主を操った結果なのかもしれない。

マラリアは高熱を引き起こし、ヒトを動けなくすることで、蚊に噛まれやすくしている。

子供の連鎖球菌感染と、強迫性障害に関係があるかもしれない。
連鎖球菌はヒトの体内に入ると、「分子擬態」を行い、ヒトの細胞(心筋細胞、脳細胞など)に化ける。

体内に侵入した異物を感知した免疫系は、その異物に対する抗体を作り出すが、異物自体が分子擬態を行っているため、その抗体は異物と自身の細胞どちらも攻撃してしまう。(自己免疫疾患)
リウマチ熱を発症した子供の一部に、心疾患の合併症がでるのは、心臓弁に似せた細菌だけでなく、心臓弁そのものの細胞まで攻撃してしまうから。

連鎖球菌感染症に関連した小児自己免疫性神経性心疾患(PANDAS):大脳基底核を抗体が攻撃することによって起こる。

また、性感染症はヒトの性行為を助長するような影響を与えている?

行動表現型:生物が自身の利益のために、その遺伝子構造と環境の間の相互作用をやりくりしようとした結果、目に見えて現れる行動のこと。
行動表現型の例は、糞などに嫌悪感を感じてよけることや、くしゃみをするときに口を押えるように社会から教わることなど。

また、霊長類が病気に感染すると、群れから見放されるとされているが、実は感染した霊長類が自ら群れから離れている可能性がある(自分の遺伝子を守るために)

もし、何かに感染した個体が自身から群れを離れるのだとすれば、一人でうろついている個体を見たとき、その他の個体はどう思うのだろうか?

見知らぬ人やモノを恐れるのは、感染の危険から自身を守るため

細菌、ウイルス、微生物はヒトよりも圧倒的に素早く進化する。
人が病気から生き延びるように進化してきたのと同様に、ウイルス、微生物も人に合わせて進化を繰り返している。

黄色ブドウ球菌の繁殖を抑えるペニシリンは、ペトリ皿の上で1928年に発見された。そしてその14年後に実際に治療に用いられた。しかし、治療に用いられた後、たった7年(1950年ごろ)で黄色ブドウ球菌の約40%はペニシリンに耐性をつけていた。
1960年ごろには、80%の黄色ブドウ球菌がペニシリンに耐性をつけていた。

ペニシリン→黄色ブドウ球菌
効かなくなったので、メチシリンを用いるようになった。が、2年後にはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が発見された。
そしてメチシリンではなくバンコマイシンを使うようになった。が、1996年に日本でバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌が発見された。

毒力:細菌、ウイルスなどの有機体が宿主に与える影響の有害度を「毒力」と呼ぶ。
そして、有機体が宿主に与える毒力はその有機体(感染症)の移動手段と関係している。
(感染症は自身の生存を最終目的としているから)
有機体(感染症)の移動手段は主に以下の3つ
1.宿主同士が直接接触する、もしくは空気を介して感染する(普通のカゼや性感染症など)
2.中間媒体の生物(蚊、ノミ、ハエなど)に運んでもらうことで移動する。(マラリア、チフス、黄熱病など)
3.汚染された食品や飲料水を介して感染する。(コレラ、腸チフス、A型肝炎など)

1.は感染者に動き回ってもらうため、毒力を強く持つような淘汰圧はかからない。
(カゼは感染者に動き回ってもらうことと、自身の生存を最大化できるような適度な毒力を持つように進化した)
2.3.は宿主に動き回ってもらう必要がないため、自らの毒力を生存のために強めるような淘汰圧がかかる
(マラリアは宿主を動けなくして、できるだけ血中をマラリア原虫で満たした方がよい。
コレラはできるだけ下痢を引き起こして、拡散してもらった方がよい。)

逆に言えば、「人間を動かすしか病原体を広める手段がない」状態にしてしまえば、病原体は人間からできるだけ搾り取ってやろう、という発想にはならず、毒力を強める淘汰圧はかからない。

コレラは下水整備が整った国では、毒力を減らしたが、下水整備が整っていない国では毒力を増した。
その理由は、下水が簡単に飲料水などの水源と混じるのならば、宿主は動く必要はなく、これらは自身の毒力を増すだけでよいから。しかし、下水が整備されており、飲料水に簡単にコレラが混ざらないような状況だと、宿主に動いてもらう必要があるため、毒力を減らすから。

病原体の進化速度には勝てないので、病原体の進化をコントロールする発想を持つ。
感染のためには人間が活発に動き回る必要がある環境を作ることで、病原体の毒力を減らせるかもしれない
(下水管理を徹底し、飲料水の水源を守ることでコレラは毒力を減らす)
(マラリア患者を蚊が全くいない環境に隔離したりすることで、もしくは蚊を一掃することで?、マラリアは毒力を減らす)

が、この毒力を減らすための環境づくりの発想は、炭そ菌などの宿主の体外で長期間生き残ることができる有機体には通用しない。

人間と細菌がともに共存できるような「落としどころ」となる合意点を想定して、細菌がその合意点に向かって自由に進化できるような環境づくりをする。

 

6章:僕たちは毎日少しづつ進化している?

ヒトのDNAの中でたった3%しか細胞を作る指示を出していない。残りの97%のDNAは何も作っていない。
その97%のDNAを非コードDNAと呼ぶ。

ミトコンドリアDNAのように、「もと細菌」「もとウイルス」のDNAはヒトのDNAの中で約1/3 だと考えられている。

太陽光でも遺伝子変異は起こる(皮膚がんが代表)

太陽の黒点活動が最大になる時期のすぐ後にインフルエンザの流行が起こっている?
偶然かもしれないが、一つの仮説としてインフルエンザウイルスに太陽光が膨大に降り注ぐことで遺伝子の突然変異が起きるから、だというものがある。

今までは生存に有利になるような変異をできるかどうかは運次第で、偶然にも生存に有利に働く変異にのみ自然淘汰がそれを助ける、という考えが一般的であったが、その考えはヒトゲノム計画で崩されつつある。

ヒトゲノム計画以前は、一つの遺伝子は一つの役割しか持っていないと思われていたが、人間の遺伝子数が思ったよりも少ないことが分かったので、遺伝子は一つ、もしくは複数が組み合わさることによって様々な役割を果たすことが分かった。

遺伝子は個々の支持が集められたものではなく、何か変化が起こればその変化に組織的に対応する複雑な情報ネットワークだと考えられる。

一つの遺伝子をノックアウトしたとしても、そのノックアウトが上手く働かないことが多いように、一つの遺伝子が突然変異したとしても、その突然変異が与える影響は少ないと考えられる。というかほぼないと考えられる。

獲得遺伝形質:親が生きている間に獲得した形質は、生まれてくる子供に継承される、という理論(ラマルクによる)(この獲得形質理論は現在では否定されている。代わりにエピジェネティックス)

ジャンピング遺伝子(トランスポゾン):自分たちの遺伝子を別の遺伝子内に切り貼りしていくような遺伝子。ジャンピング遺伝子はでたらめにうごくのではなく、その動きには規則性がある。

ジャンピング遺伝子(トランスポゾン)の発見によって、変異はめったに起きない微小なものではなく、もっと急速に起こる可能性が示唆された。

トランスポゾンはストレス下で転移しやすいことが分かっているし、ある特定の遺伝子に転移しやすいことが分かっている。
つまり、トランスポゾンは意図的に生存を最大化できるような変異を探しているのではないか?という仮説が出てくる。
ゲノムは自ら有利な変異を狙って、賭けに出ている。

ケアンズ:「大腸菌はどの変異を起こしたいのかを選ぶことができ、獲得した形質を遺伝させるメカニズムを持っている」

「超変異理論」:「自身の生命が危機にさらされた時に、変異速度が平常時と比べて極端に速くなる」ことも分かっている。つまり、どの細胞も生命の危機などのストレス下に置かれると、変異速度を急激に早める。

ワイスマンの壁:生殖細胞と体細胞の間の壁のことで、体細胞の情報が生殖細胞にいくことはない、ということ。
が、レトロウイルスはこのワイスマンの壁を通り抜けて、体細胞の情報を生殖細胞に伝えることができる。
つまり、後天的に獲得した形質が、遺伝子にのって遺伝される可能性があるということ。

トランスポゾンは脳の発生の段階で特に活発に働き、個人の多様性を作りだそうとしている。

同じく多様性が必要な抗体の産生でも、トランスポゾンに似た仕組み「VDJ遺伝子再構成」がある。
VDJ遺伝子再編成(組み換え)はトランスポゾンのカット&ペーストに似ているが、違う点がある。それは「きっちりと接着するのではなく、再構成の際に余った鎖を小さな輪にして残す」こと。

断続平衡説:種の進化の過程には、ほとんど進化しない静止期と、大規模な環境変化が引き金になって勢いよく進化する激動期がある、という説。(この説の激動期を支えているのが、トランスポゾン?)

非コードDNAの約半数がトランスポゾンで絞められている。
また、トランスポゾンはレトロウイルスに非常によく似ている。
レトロウイルスはDNAからRNAを生成することができるので、「もとのDNAの設計図を書き換える」ことができる。
そして、ウイルスのDNAと宿主のDNAが区別できなくなる。

ヒトゲノムの約8%はレトロウイルスと関連の成分が人間のDNAの一部になってしまったことにより生じたと考えられる。
(ヒトレトロウイルス(HERV)とも呼ばれる)

DNA型トランスポゾン:コピー&ペースト
レトロトランスポゾン:カット&ペースト

レトロトランスポゾンはまず、DNAをRNAに逆転写する。そして逆転写されたRNAが挿入したい場所まで来ると、DNAに転写されてから挿入される。

人間の進化を内側から後押ししてきたのは、ウイルスである。
ウイルスと共同作業をしているおかげで、人間は達成不可能な速さで複雑な生き物に進化できた。
(ウイルスは人間のゲノムにただ乗りする。そしてウイルスは自身が持っている膨大な遺伝子の中から人間に遺伝子コードを貸し出す。ウイルスは宿主と生死を共にしているのだから、共同作業できる。)

ウイルスは新しい遺伝子を大量に生み出して、その一部を宿主に送り込んで安定したウイルス入植地を作り出す、遺伝子レベルの究極の創造者

人がサルから急速な進化を果たすことができたのは、レトロウイルスのおかげかもしれない。
(特定のレトロウイルスに感染すると、別のレトロウイルスが感染しやすいような体内環境に作り替えられる。)

 

7章:親がジャンクフード好きだと子供が太る?

母親の妊娠初期の食習慣が、子供の食事代謝に大きな影響を与える。

遺伝子自体が変わらなくても、その発現様式は簡単に変わる。

エピジェネティックは「親から受け継いだDNAを変えることなく、親が獲得した形質を子供がどうやって発現するのか?」を研究する分野。

アグーチ遺伝子=白っぽい毛と肥満を特徴とする

DNAのメチル化=メチル基が遺伝子に結合することにより、DNA配列を変えることなく遺伝子の発現作用だけがオフになること。

「予測適応反応(母性効果)」は=母親の体験が子供の遺伝子発現に影響をあたえること

妊娠1周目の妊婦が典型的なジャンクフード中心の生活をしていると、胚はこれから生まれる世界は食事事情が悪いのだ、という信号を受け取る。(ジャンクフードは高カロリー高脂肪であるが、栄養素、特に胚の発生に必要な栄養素が含まれていない)

様々な遺伝子発現を変化させて、少ない食料でも子孫を残すまで生き残れるような体の小さな赤ん坊やエネルギーを蓄えやすい赤ん坊を作る。

節約型表現型説=栄養分が乏しい体験をした胎児は、「節約型」の発現様式を発達させて、体内にエネルギーを蓄えやすい体になる。逆に消費しにくい体になる。

エピジェネティックスでは母親の影響が主に考慮されてきたが、近年父親からの影響が考慮されつつある。
(生殖能力を持つ前までに喫煙経験のある父親はからできた男児は、明らかに太る確率が高くなる。)
(男児限定なので、Y染色体上で伝えられるのではないか?とされている。)

つまり、予測適応効果は父性効果ともくみ取れる。

母親の配偶子の半分は祖父母から遺伝子を受け継いでいるので、エピジェネティックスは祖父母まで関係するとされる。
特に卵子は胎児のころに形成されるので、エピジェネティックスの影響が大きいとされる。

(祖母が母親にエピジェネティックス信号を送ると、その送られた信号の半分が子供に伝えられる。)

メチル化による変化(エピジェネティックス)が世代ごとに消去されないのであれば、それは突き詰めれば進化になる。
つまり、エピジェネティックスは進化の一側面。

エピジェネティックスは出生前だけでなく、生きている間中に起こっている。
(生まれたすぐ後に愛情深くされたラットは、脳の発達阻害に関係する遺伝子のメチル化の度合いが大きかった。)

人間は脳の発達が他の動物よりもかなり低い状態で生まれてくるので、エピジェネティックスが与える影響が大きいはず。

一卵性双生児の遺伝子のメチル化パターンは、離れて暮らす期間が長いほど大きくなる。

PITX2(乳がんの再発を抑える遺伝子)などの抗がん遺伝子のメチル化の度合いを調べることで、オーダーメイド治療ができるようになる。

何かがメチル化されていることは分かるし、発現様式が変化していることは分かるけれども、どの遺伝子がオンになって、どの遺伝子がオフになっているのかが分からないため、ヒトにおいてメチル化を試すような実験は避けた方がいい。
(脳の発達を阻害する遺伝子のメチル化が、抗がん遺伝子のメチル化を引き起こすかもしれない。)

アザシチジン:骨髄異形成症候群(MDS)を特定の遺伝子のメチル化によって防ぐ薬。

緑茶は抗がん遺伝子のメチル化を防いでくれる。

薬、カフェインやアルコールへの耐性は、メチル化以外の要素で起こっている。
(その時々の体に合わせた翻訳調節機構)

カリフォルニア州では911事件の後に、男児の流産率が25%も上昇した。
ドイツの東西分裂、阪神淡路大震災でも同様に、男児の流産率が上昇している。
一方で、第一次、第二次世界大戦直後は男児の出生率が上昇した。
つまり、妊婦の心の状態が何らかのエピジェネティックスな変化を胎児にもたらしている?
(良い時代には多くの男性を、悪い時代には多くの女性を、的な)

女児よりも男児の方が死にやすいのは、多数の女性と少数の男性という図式の方が、種の保存によっては確実だから?

エピゲノム・プロジェクト:「ゲノム上のメチル化を受ける部位を全てマークしていく」

 

8章:あなたとipodは壊れるようにできている

早老症候群などの希少な病気の研究から、正常な老化プロセスについて知ることができるかもしれない。

プロゲリア(ハッチンソンーギルフォード症候群)はラミンAというタンパクを作り出す遺伝子が変異している
また、正常な高齢者にもプロゲリアと同じようなラミンA(を作り出すタンパク)の欠損が見られた。
つまり、早急な老化と正常な老化には共通のプロセスが存在した。

ヒトは最初から死に向かうようにできている?プログラムされている?

ヘイフリック限界=細胞分裂の限界回数のこと(52~60回)
ヘイフリック限界の例外はがんと肝細胞

細胞分裂の回数を限定させるような進化をした理由は「がん」

環境的な脅威にさらされている個体は、成長を早くして、子孫を早く作る方向に進化圧力がかかるため、自己の細胞の異常を修復するようなシステムを持たない。また、子孫を早く作るということは、世代交代が速いということなので、それだけ進化を早く行うことができる。

老化のプログラミングのメリットは以下の2つ
1.老化は旧モデルを片付けて、新モデルのための余地を作る。つまり、進化による変化を生み出す余地を作る。
2.老化は寄生虫に侵された旧世代を排除して、新生代を守ることができる。
つまり、セックスと老化は「種のアップグレード戦略」である。

出産の3重の脅威
1.背中を向いて生まれてくる新生児(ヒトが一人で助産しようとしても、脊椎を逆向きに曲げる危険がある)
2.大きな脳の発達
3.直立二足歩行用に設計された骨盤

これらの3重の脅威によって、ヒトの出産は伝統的に他人から助けを必要とする。

水生類人猿説(アクア説):人類の祖先は以下のようなメリットから、水中と陸、どちらでも活動できるような水辺で生活と進化をしてきた。
・水中で息を保つためには、二足歩行が最適
・陸上の脅威からも、水中の脅威からも逃れることができる。
・類人猿の中でヒトだけに体毛がないのは、水の中で動きやすいから。
・人間の鼻が高く、鼻の穴が下向きであるのは、水に潜る時に都合がよいから。
・陸生の大型哺乳類の中で皮下に脂肪を蓄えている種は人間だけあり、皮下脂肪は水の中を素早く動くために存在する。
・陸上よりも水中の方が食料が豊富。
・水中の出産の方が母子ともにメリットが多い。
・人の胎児は生まれてすぐに泳ぐことができる

なぜ?という気持ちを忘れてはいけない。
なぜを突き詰めて、そして何かが分かったら、それを使うことを考える。

なぜ???
・なぜヨーロッパ人には鉄を体内に蓄積させる遺伝病が多いのか?
・なぜ北ヨーロッパには1型糖尿病患者が多いのか?
・人はマラリアにかかると寝たきりになるのに、なぜ普通のカゼなら通勤・通学できるのか?
・人間の体にはなぜ無駄に見えるDNAが無数に存在するのか?

それをどう使うか???
・ヘモクロマトーシスがペストから人々を守ってきたという考えを、どのように応用すればよいのか?
・1型糖尿病は氷河期の淘汰圧によって生まれたという説を、どのように応用すればよいのか?
・マラリアが患者を寝たきりにさせる毒性を、どのように変えればよいのか?
・トランスポゾンをどのように活用すればよいのか?

 

本の内容理解のための質問事項

1.本の問題提起、問題意識はなに?

なぜ病気を引き起こすような遺伝子が淘汰されていないのか?

2.この本はどのように始まり、どのように終わったか?

作者の研究の体験や疑問を持った体験で始まり、なぜ?を追求する姿勢の重要性で終わった。

3.自分がこの本をまとめるとしたら「一行で」どうまとまる?

火のない所に煙は立たないし、全ての物事には根本となる原因がある。

4.この本のキーポイントやキーコンセプトは何?

進化は完璧ではなく、他の生物との共存、競争によって引き起こされる。

5.この本のチャート、グラフ、図から何を学べる?

図はなかった。

6.この本が他の本と似ているものは何?

進化の立場から考察しているところ。

7.この本を読んでいる時にどんな感覚を感じたか?

進化の立場から研究してみる視点をもつことは、面白いと思った。

8.なぜこの本は重要なのか?

遺伝子や進化の立場から疾患を研究する面白さを教えてくれるから。

9.作者が一番伝えたいことは何?

なぜ?を忘れない。なぜ?から発見したことを使う発想を持つ。

10.この本のタイトルはこれでいい?自分でタイトルをつけるとしたら?

よい。「迷惑な遺伝子」とか「不完全な進化」とかにすればよいかも

11.この章には何が書かれている?ーおすすめの章を友人に勧めるような感じで

2章には糖尿病を引き起こすような遺伝子がなぜ淘汰されなかったのか?が明確に書いてあって、氷河期とかアフリカアマガエルなどの具体例を用いて説明してくれているので、分かりやすいヨ。

12.前書きはこの本を面白くするために役に立ったか?

「冒険とロマンに満ちたメディカル・ミステリーツアーへ、ようこそ」

この書き出しが全てを表している。役立った。

13.作者はこの本をおもしろくするために、どのような工夫をしていたか?

語りかける口調や、読者に疑問を投げかけたりするなど、読者が飽きないような工夫をしている。

14.作者は章や節の書き出しでそのような工夫をしていたか?

あたりまえの皆が知っている事実や、有名なヒトの具体例を挙げて、興味を持たせる、理解を促している。

15.この本のどこに一番共感できるか?

なぜこのような遺伝子が残っているのか?という

16.この本は良い終わり方をしたか?

なぜ?という気持ちと、その気持ちを利用することを忘れてはいけない、と念押ししているので、よい終わり方をした。

17.この本の中で登場した例で、印象的なものは?

植物が持つ多種多様の、有害にも有益にもなる化学物質。

ヘモクロマトーシスとペストの関係性。

一型糖尿病と氷河期の関係。

病原体の毒性の強さとその拡散方法。

エピジェネティックスも広範な意味での進化であること。

などなど。

18.この本の特徴的な点、変わっている点はどこか

図が一切ないのに、すべて分かりやすく理解できること。

19.この本の中で一文だけ重要な文を抜き出すとしたら?

なのになぜ、こんな遺伝子が残っているのだろう?

20.この本の中でのキャッチコピーは何?

迷惑な進化

21.この本の中で一番印象ぶかかったことは何?

他の生命体と関わりながら、種全体として環境に適応することが進化である。

22.なぜ自分にとって、この本を読むことが重要なのか?

・なぜ自然淘汰を生き抜いてきたはずの生物の遺伝子には、病気の原因になってしまうようなものがあるのか?を知りたい
特定の病気になることはあっても、種全体の生存やその病気よりも重篤なものをさけることができるから。

・進化医学について考えを深めたいー進化医学は基礎研究に使えるのか?
ー基礎研究に使えると思う。進化の考えはどの分野に行っても共通して使える。特に遺伝子研究の場合は、集団遺伝学などで、特定の遺伝子を共通している集団の差異を分析するために使える。ただし、現在の日本に進化医学的な発想を行う人はいないので、自分で道を開く?いや、神戸にいるわ。

・進化的なアプローチで現在の疾患を治療することはできるのか?
ー進行中の疾患を治療することは難しいかも。進化的なアプローチが提供するものは究極的な説明であり、それが実際の臨床分野での治療に使えるかどうかは疑わしいから。ただし、原因が分かれば、何らかの形でその根本原因を使うことができるはず。

・進化医学の先駆者であり、神経遺伝学、人間生理学の博士である作者はどのような視点で医学研究に向かっているのだろうか?
なぜ?という気持ちを忘れない。自分の父親がヘモクロマトーシスになったのはなぜなのか?なぜヘモクロマトーシスという遺伝病が残っているのか?などを突き詰めて考えていく。そして、その考えから得た説明を、現在に利用できないか?を考える。

・自分の研究のモチベーションを上げるために、この本は使えるかもしれない
ー少し教授と議論する。

23.自分がどこでつまずきやすいか?何が分からないからこの本を読むのか?

進化医学は基礎研究に使えるのかどうか、臨床研究に使えるのかどうか、そして実際に進化医学を研究するときは、どのような立場で、どこで考えればよいのか?

 

この本から学びたいこと

伝染病に強い遺伝子とは?

ヒトは伝染病と共に進化してきた。そして、伝染病に強い遺伝子の一例は、ヘモクロマトーシス?または活性酸素を分解できる酵素の不足?

腺ペストは鉄を多く含んでいた人類集団で(特に男性)で発病していたし、マクロファージや赤血球内の鉄を、伝染病をもたらす細菌が増殖するために利用することがある。

貧血の強みとは?

体内の鉄分が少なくなること。

結果として微生物や細菌が体内の鉄を利用して増殖することがなくなる。

 

糖尿病は氷河期の生き残りなの?

1型糖尿病は自身が作り出したインスリンを壊してしまう自己免疫疾患とも考えられているが、北ヨーロッパで1型糖尿病患者が多いことを考えてみるべき。

地球には何度か氷河期が訪れており、短い期間の氷河期を小氷期と呼ぶ。

そして、その小氷期に適応できた個体が、体内の血糖値を上げるような変異を起こした個体だったのではないか?

 

コレステロールは日光浴で減るのか?

コレステロールは紫外線によってビタミンDの合成に利用される。

 

酒が飲めない遺伝子とは?ーなぜ存在する?

酒が飲めない遺伝子はアジア人に多い。

アジア人の多くは「ALDH2-2」というアセトアルデヒド脱水酵素の力が弱い遺伝子を持っている。

その理由は綺麗な水を確保する方法が、他の地域に住むヒトと異なったから。

ヨーロッパ地域に住むヒトは、綺麗な水の確保に「発酵させる」という手段を用いた。

しかし、アジア地域に住むヒトは、「湯煎する」という手段を用いた。

この違いが、アジア人の多くに酒が飲めない遺伝子を持っている理由になる。

 

活性酸素はなぜ存在する?

活性酸素はフリーラジカルの一種。

ペアとなっている電子が存在しないために、よく分からないものにペアを求めることで害をもたらす。

G6PD:ブドウ糖ー6-リン酸脱水素酵素は赤血球をフリーラジカルや活性酸素から守る。

ソラマメに含まれている成分は、活性酸素の一つである過酸化水素を合成するので、G6PD欠損を持っている人はソラマメ中毒になる。

 

病原体を味方にするための方法とは?

腸内細菌(プロバイオティクス)は、人間と栄養となる物質が異なるために共存できている。

病原体自体を味方にすることはできないかもしれないが、病原体が持っている毒性(毒力)を減らすことを余儀なくされるような環境づくりを徹底することで、病原体の悪影響を減らせるかもしれない。

 

突然変異は偶然ではない、とは何を究極的に意味している?

突然変異は偶然で、偶然自然淘汰を生き残ることができた個体だけが、遺伝子を残すという考えが一般的。

しかし、トランスポゾンという移る遺伝子やレトロウイルスなどとの共同作業によって、ヒトは自身の生存を高める可能性が高い変異を選択的に行っている可能性がある。

これが突然変異は偶然ではない、の意味。

進化は妥協的だが、完璧ではないが、完全に偶然によって引き起こされるようなものでもない。

生物と生物はお互いに関わり合っており、それぞれの個体どうしで淘汰圧をかけることだってある。

 

遺伝子スイッチのオンとオフの切り替え方は?-メチル化?

メチル化によって行われる。

エピジェネティックスとは「親が獲得した形質が、どうやって遺伝子自体を変えずに子供に遺伝するのか?」を研究する学問。

エピジェネティックスは胎生期~産まれてすぐに大きな影響を与えると考えられてきたが、現在では一生を通じて、遺伝子の発現様式は変化すると考えられている。

 

なぜ生命は壊れるように設計されているのか?

癌を防ぐため。それだけ。

 

人類は水中で暮らしていたとは?-人類の祖先の話?

人類は陸上と水中、どちらでも生活できるような進化を遂げてきたのではないか?という仮説。

アクア説、もしくは水生人類説とも呼ばれる考え方。

水中での出産がもたらすメリットや、外敵から身を守るための手段としての水の利用、皮下脂肪の存在、毛の退化など、アクア説を支える証拠は数多くある。

 

なぜ体によくない、病気を引き起こす遺伝子が人間にのこっているのか?

特定の病気になることはあっても、種全体の生存やその病気よりも重篤なものをさけることができるから。一面では悪でも、もう一面では善になることがある。

 

なぜ遺伝子に要因のある病気が起こって、それがどのようにして広がったのか?

遺伝子に要因のある病気は、その個体が生殖可能年齢まで生きるために役立つ。

また、自然淘汰による加速的な変異、や創始者効果などによっても説明できる。

生命は遺伝子を積極的に混ぜ合わせようとする。

 

どうすればこの本で得た知識を実生活を健康で長生きするために使うことができるのか?

研究に使う。簡単に遺伝子がメチル化されることを理解する。

 

遺伝子プールとはなにか?

ある個体群、種全体が保存する遺伝子の総体のことで、基本的には生存に有利に働くような遺伝子だけが遺伝子プールに蓄えられていく。

 

参考文献


迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか

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