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日記・雑記

母親と夜に散歩をした話

投稿日:

小学生のころ、たぶん小学3.4年生くらいだったと思う。

 

夜に母親から散歩に誘われた。

 

夜の9時は過ぎていたと思うけれど、散歩をしよう、と言われた。

 

 

なぜ私を散歩に誘ったのだろうか?

 

 

体が弱かった私のことを気遣っていたのかもしれない。

 

彼女に何らかの悩みがあったのかもしれない。

 

ただの気分転換だったのかもしれない。

 

夜に一人で歩くことが怖かったのかもしれない。

 

 

とにかく、散歩に誘われた。

 

 

しぶしぶ了解して、私は誘われるがままに母と一緒にマンションを出た。

 

昼間に普段歩いている道が、月明かりに照らされて全く別のものに見えた。

 

私よりも先を歩く母。

 

背が小さい私。

 

視界が狭い、子供だけの幻想的な世界。

 

電柱によって作られる母の影。

 

夜の世界が見せる影と光のコントラストに、私は夢中になって歩いた。

 

私に背を向けながら歩く母親も楽しそうだった。

 

 

が、突然の痛みに襲われた。

 

 

視界が落ちる。

 

こけた。

 

膝が痛い。

 

よく見ると、膝の部分が肉までえぐれていた。

 

コンクリートのごつごつとした地面に、膝から擦ってしまったのだ。

 

 

母親が寄ってきた。

 

母親の顔は月明かりの影になっていて、よく見えなかった。

 

 

散歩を邪魔された母親は、どんな顔をしていたのだろう?

 

 

「帰ろうか」

 

母親の言葉に従って、帰宅した。

 

 

結局、母親と二人きりでに夜に散歩をする機会はそれ以降なかった。

 

 

なぜ私を散歩に連れ出したのだろうか?

 

 

なぜ兄ではなく、なぜ父ではなく、なぜ私だったのだろう?

 

 

なぜ私はこけてしまったのだろう?

 

 

振り向いた母親は、どんなことを思ったのだろうか?

 

 

膝から血を出している私を見て、何を思ったのだろう?

 

 

どこまで散歩に行く予定だったのだろうか?

 

 

一体、いつまで?

 

 

なぜもう一度散歩に誘わなかったのだろう?

 

 

いつの間にか、私は二十歳になっていた。

 

 

私の左膝には、今でも真っ白な傷跡がはっきりと残っている。

 

 

そんな幻想的で、儚い昔話。

 

 

 

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