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医学的知識 読んだ本紹介

人はどのようにして進化してきたのか?~人体失敗の進化史の内容まとめ~

投稿日:

人体 失敗の進化史 (光文社新書)の内容まとめです。

メタ認知読書に従って、内容を理解するための質問事項を最後に追加しています。

人体が如何にして進化してきたのか?
動物に共通する進化の仕方は何なのか?

という疑問に答えてくれる本です。

 


人体 失敗の進化史 (光文社新書)

本文の要旨やまとめ

序章:主役はあなた自身

どんな状況にでも対応できるように「常に遺体を目の前にしたときの自分を想像し、その自分を追い詰めておく」
これが遺体解剖に携わる者のプロ意識。

現実の研究の現場で死に対面する人が持つものは、ただ冷静なる科学の目だけ。

遺体は人と人とのつながりをもたらすものであり、遺体こそが私たちの体の不思議を解き明かすものである。

第一章:身体の設計図

体の設計図というアイデア
人の場合は、「設計変更」とも呼ばれる


浅胸筋:むね肉
深胸筋:ささみ

鶏とヒトの肩甲骨は全然違う。
鶏の肩甲骨は頼りない

脊椎動物にはもともと鳥口骨と肩甲骨があった。
しかし、ヒトには鳥口骨が存在せず、鳥は鳥口骨を大きく発達させる進化を遂げた。

進化は確かに自然淘汰と突然変異の積み重ねであるが、種は形の設計図からは逃れることができない。

脊椎動物:鳥口骨と肩甲骨が胴体と腕を結び付ける
鳥類:鳥口骨が発達
哺乳類:肩甲骨が発達

ちなみに犬に鎖骨はない。

機械の設計図が白紙から作られるのと正反対で、
動物の設計図はすでにある優れた設計図の一部を消して、新しく何かを付け加えることでしか設計されない。

(不完全な設計図は確実に自然淘汰されるから)

第二章:設計変更の繰り返し

動物の体は、まるで自らが意思を持っているかのように、高速に、次から次へと絶え間なく進化してきた。

生きている動物の、自分自身の体にこそ進化の歴史が刻まれている。
意図しなかったような奇妙な成功や、必然たる失敗の跡が刻まれている。

動物の体はパーツごとに見てみると分かりやすい。
それぞれのパーツが厳しい自然淘汰の中で生き残るために適応してきたから。

奥泉光「石の来歴」
骨と石は同じような印象を持つ。同じく静的であるという点で。

骨の役割
・体の支持(重力への抵抗)
・運動の起点
・外界の刺激からの防御

リン酸とカルシウムを保存しておくための装置として骨の原型が生まれた?
骨はリン酸カルシウムから形成されており、どちらの栄養素も生体の維持に必須ではあるが、継続的な入手が困難。

そして、骨を起点にして筋肉を形成するなど、新しい個体が生まれる。
次に骨を持った脊椎動物が陸上に上がるようになる。
さらに、骨は重力への抵抗としての役割を進化の過程で持つようになる。
これが、骨の形成の流れ。

骨の進化の過程で面白いことは、「本来の目的と結果が異なる」という点。
「前適応」ともいうのだが、本来の目的と進化の結果が異なるというのは、進化においては王道とも言える。

教育が合理的な到達点だけを目標にするようになると、進化は教育で教えられなくなる。
なぜなら、進化というものはお金になることはなく、すぐに人の役に立つことはないから。

(研究的な発想には役立つ)

”教育を目標化した医学や獣医学が教授する解剖学は、例外なく愚かでつまらないものだ。医師が次の医師を生産するという合理的な目的をカリキュラムやらシラバスやらに掲げた瞬間、ヒトの身体を教育することから、徹底的に進化の視点が排除される”

耳小骨は爬虫類のアゴが基になっている。
耳小骨が発達した理由は、聴覚情報を多く取り入れる必要があったから。
地面に近い生活をしている動物は、地面の振動から多くの情報を手に入れることができる。
しかし、二足歩行をしたヒトのように、地面からの情報を手に入れることができない動物は、多くの聴覚情報を必要とした。

アブミ骨だけでも音を聞くためには充分であったが、それだけでは足りなくなった。
そこで、顎にあった骨を使って、ツチ骨とキヌタ骨を作り上げた。
それと同時に側頭部と下額部に存在した骨を顎の骨の代わりに利用し始めた。

無から有を作り上げるのではなく、既にあるものから新しいものを作り上げる。
これが動物の進化の基本。耳小骨の例はこのことをよく示してくれている。

顎はもともと鰓構造から進化した。
(鰓弓っていうよね)

四肢の進化について
・ユーステノプテロン:一見すると魚だが、鰓の中にはっきりとした骨を持っている
・イクチオステガ:四肢が確認されるもっとも古い動物

シーラカンスはユーステノプテロンに近い鰓の使い方をしている。
そのため、シーラカンスの泳ぎ方を見ると、なぜユーステノプテロンが鰓の中に骨を持つ必要があるのか?が分かる。

ホバリングなどの、水中で特殊な泳ぎ方をするために、鰓の中に骨ができた(前適応)

気が付いたら手足になっていた

へそは哺乳類だけの特権ではない。
爬虫類も、鳥類もへそを持っている。
特に、カメは立派なへそを持っている。
(卵黄嚢と尿嚢)

卵黄嚢と尿嚢を退化させ、新しく胎盤につないだものが臍帯。(臍帯の前適応は卵黄嚢と尿嚢)

乳腺は汗腺から生まれた。汗腺はもともと、汗として老廃物を分泌するために血管が集まっている。(汗腺=前適応)
カモノハシは卵を産む哺乳類で、原始的な乳腺を持っており、乳で生まれた子供を育てる。

脊椎動物は、初期の動物ほど体の外見も、内臓も対称性を保っている。
が、ヒトに代表されるように、内臓は非対称であることが多い。

脊椎動物が酸素を取り入れて、どのようにして血液を流すのか?という作戦は、体の左右対称性をつぎはぎだらけにしながらも、
改良してきたことによって、実現可能になっている。

浮袋のなかの空気の量は、浮袋の周りに存在する血管によって調節されている。(肺の空気から酸素を取り込む仕組みの前適応は浮袋)

また、ハイギョなどのように、鰓をハイのように適応させた魚類も存在する。(肺の構造の前適応は鰓)

鳥の翼の大部分は羽毛でできている。
そして、その羽毛の主成分はケラチン(ヒトの髪の毛などの表面の硬い構造物)
骨や筋肉という運動装置以外に、ケラチンを鳥類は飛ぶために使っている。
(鳥類の翼部分の骨は、驚くほどシンプル。ほぼ一直線。)

ただし、コウモリは腕、足全てに翼が付いている。
そして、翼部分を構成する骨は、驚くほど発達した手掌骨と指の骨。

鳥類は全身を軽くするために、骨を癒合させて一体化させている(ex:腰仙骨)
骨を細かく分けると、柔軟な運動ができることは確かだが、骨一つ一つに筋肉をつけなければならないため、
体の軽量化という点では不向き。そのため、複数の骨を癒合させたうえで、内部を極限まで空洞にしている。

”新しい体は祖先の設計変更をすることでしか生まれてこない”
進化とはただ何となく、行き当たりばったりに体のパーツをつぎはぎしたものなのかもしれない。

第三章:前代未聞の改造品

プロコンスル:ヒト科の祖先の候補。肩関節を大きく動かすことができ、背骨を地面に対してほぼ水平に保っていた。つまり、背骨が一直線だった。

”設計変更可能な優れた設計素材”

気候変動によって、土地が開き、樹木がなくなったことで類人猿は二足歩行を始めた?

実際に二足歩行を始めたのは、370万年前のアウストラロピテクス・アファンシス

ヒトの土踏まずは二足歩行に必須の”重量配分機構”。つまり二本足でバランスを取るための機構。

類人猿と比較して、ヒトの踵は異様に大きい。足の平らな部分も大きい。しかし、指は短い。
ヒトの足は中足骨の前方と、踵の間でアーチを作っている。また、まっすぐ立つと重力はそのアーチの両端に分布するようになっている。
そのアーチこそが土踏まず。

ヒトは歩行時に中足骨の前方と、踵の二か所に大きな負担がかかる。
その負担を支える働きを持っているものこそが、アキレス腱。

二足歩行する際の問題点の一つは”重力の方向が90度逆転すること。
そして、ヒトはその重力方向の変換に対応するために、ほか霊長類よりも大きな骨盤を持って、内臓を下から支えている。
また、背中と腹部から膜で内臓を覆うことによって、内臓の下方移動を抑制している。
また、肝臓や胃などの大きな臓器が、類人猿と比べるとかなりしっかりと横隔膜に接着している。

4足歩行動物が、足を後ろに蹴り上げる動作で用いるのは、大腿二頭筋。
しかし、直立二足歩行している人が用いるのは、大殿筋や中殿筋。
臀部の筋肉が発達したのは、歩行時に足を後ろに蹴り上げるためと、骨盤が大きくなったから。

母指対向性:手の親指が向く向きを変えることができる性質。ヒト特有の性質。

ブローカー中枢:発声を担当する運動性言語野。障害を受けると発声できなくなる。
ウェルニッケ中枢:構語を担当する感覚性言語野。障害を受けると発声はできるが、意味のない言葉を話すようになる。

普通は排卵の前後しか交尾をしない。が、ヒトの場合は年がら年中している。
コミュニケーションとして、妊娠を目的としない交尾が発達している。

月経は類人猿などの一部の哺乳類に特殊な行動。

一人の女性が妊娠したとして、哺乳瓶などの近代的な道具を使わないのであれば、約2年間母乳の分泌が続く。
月経周期が28日に一回、妊娠期間が約280日だとすれば、ヒトは一回妊娠して子供を出産するのに約3年かかることになる。

3年は他の動物からしたら、とてつもなく長い時間。人が一人の子供に大きな投資を行う戦略をとってきたことがうかがえる。

なぜ月経があるのか?月経による体調の悪化を考えれば、生存に不利なのではないか?という疑問が出てくる。
しかし、人類の進化上の体の作りは「17歳で初潮を迎え、以降3年ごとに妊娠と泌乳を繰り返し、30~40歳で死ぬ」というもの。
近代化によって、月経を持つ期間が長くなった。それが月経が頻繁におこっている理由。
(晩婚化、母乳を分泌する期間の短縮、寿命の延び(50歳くらいで閉経する))
(哺乳瓶が日本に入ってきたのは明治時代)

オリジナルの人体の設計を、高度な知能で近代化した人は変えてきている。

第四章:行き詰った失敗作

冷え性、浮腫、エコノミークラス症候群などは、ヒトが二足歩行を選択したことによって、全身に血流を巡らせる機能に困難が生じたことを示している。重力によって、体内で血圧に変化をつける必要が出てきた。静脈が逆流しないような状況を作る必要が出てきた。など)

座り続けていると、上半身の体重をすべて骨盤で支えなくてはならなくなる。足で支えられなくなる。S字に曲がった背骨の後方に、上半身の体重がすべてかかることになる。

椎間板ヘルニアなどの病気が姿を現す。

鼠径ヘルニアが存在するのも、ヒトは他の動物と比較して恥骨周辺に内蔵の圧力がかかりやすくなっているから。

肩こりは全く原因が分かっていない。
が、確実に肩こりで苦しむ人がいるので、医学は対処療法しかできない。
そこで東洋医学などが介入し、命を落とすわけではない肩こりが、莫大なお金の流れを生み出している。

肩こりに関わっているのは僧帽筋だとされる。
ヒトの場合は、頭という重い物体を支えるために、そして腕や手を常に動かしているために、その動作を助ける僧帽筋が常に緊張している状態になる。
そして、緊張を長時間繰り返す僧帽筋には、十分な血流が流れなくなり、極度の疲労を感じるようになる。

肩こりは、ヒトが二足歩行によって、前肢を自由にさせることによって得たメリットの代償ともいえる。

終章:知の宝庫

遺体はヒトという生命そのものについての疑問を解き明かしてくれる最大のもの。
なぜなら、生物の進化の歴史は、その体内に刻まれているから。

”今日の大学や研究機関には、こうした問題を自由に楽しく議論していける空気がなくなってしまったという現実があるのだ。不況を理由に無思慮な行革が続けられて以来、あまりにも短期的な業績やテクノロジー開発を政策として求められた大学は、同ブウ額も獣医学も分子生物学も、飼育や死の面倒な現場を避け、即座に業績を示し、次の予算を回転させることのできる短期的、あるいは実利的プロジェクトに専念せざるを得なくなってしまったのである。
(中略)
業界争い一辺倒の、”研究者”が利己主義を振りかざしてしまう時代が来てしまった”

あとがき

”サイエンスとは、つねに現実と戦って勝ち取らなければならないものだという事実を、普通の人々に普通に知ってもらいたいのだ。
謎を解き、自分の手で心理を極めようとする学者の生きざまが、ドラマに登場する科学者のスマートさや、国家的協力と融合した富めるテクノロジーの優雅さとは、本質からして無関係であることが、この本を通じて多くの人々に伝われば、これほど幸福なことはない”

内容理解のための質問集

1.本の問題提起、問題意識はなに?
ヒトの進化はどのようにして行われてきたのか?

2.この本はどのように始まり、どのように終わったか?
遺体に対する姿勢について。
遺体は常に人と人を結び付けるものであり、遺体に接する科学者は、「常に遺体を目の前にしたときの自分を想像し、その自分を追い詰めておく」必要がある。

3.自分がこの本をまとめるとしたら「一行で」どうまとまる?
進化は常にある設計図を変えることでしか行われず、進化の失敗と成功は予期せず生み出される。

4.この本のキーポイントやキーコンセプトは何?
身体の設計図に従って生物は進化する

5.この本のチャート、グラフ、図から何を学べる?
実際の動物の遺体や骨格が、どれほど人間と違うのか?
そして、動物と人間は意外な点で共通点があるということ。(特に骨)

6.この本が他の本と似ているものは何?
進化の発想。
進化とは突然に起こり、妥協的ではあり、個体は必然的に淘汰される。

7.この本を読んでいる時にどんな感覚を感じたか?
動物の遺体を研究することによって、ヒトの進化の秘密がわかることの奥深さ。

8.なぜこの本は重要なのか?
科学に対する科学者の姿勢を解いているから。
科学者は決して栄光とは無縁の存在であり、地味で退屈な作業によって、拝金主義ではない、成果主義ではない、科学的な疑問は解消される。

9.作者が一番伝えたいことは何?
ヒトは進化の観点から見れば、不完全な要素を備えた失敗作であり、人ほど特異的で環境に影響を与える生物はいない。

10.この本のタイトルはこれでいい?自分でタイトルをつけるとしたら?
これでいい。人体失敗の進化史。

11.この章には何が書かれている?ーおすすめの章を友人に勧めるような感じで
第二章には、生物、特に哺乳類がどのようにして今の形になったのかが書いていあり、特に面白いのは、「耳小骨がアゴの骨が姿をかえたものである」ということ。

12.前書きはこの本を面白くするために役に立ったか?
狸の遺体を研究する例を取り上げて、それ以降の生物の進化を読み解く本文に興味を持たせている

13.作者はこの本をおもしろくするために、どのような工夫をしていたか?
各節の始めに、読者にとってなじみ深いような例を提示している。また、写真や図を多く使っている。

14.作者は章や節の書き出しでそのような工夫をしていたか?
同上。

15.この本のどこに一番共感できるか?
科学は地味な作業の集合であるという点

16.この本は良い終わり方をしたか?
科学への姿勢をといている点では良い終わり方をした。

17.この本の中で登場した例で、印象的なものは?
耳小骨が顎の骨であった、という例

18.この本の特徴的な点、変わっている点はどこか
実際の動物の遺体の写真が多く使われている点。

19.この本の中で一文だけ重要な文を抜き出すとしたら?

あとがき
「遺体を前にした自分を普段から追い詰めておく」
それが、遺体の研究に携わる者の修行であり、義務であり、生き方なのだ。

20.この本の中でのキャッチコピーは何?
失敗の進化史

21.この本の中で一番印象ぶかかったことは何?
進化は設計図をつぎはぎしたものである、という点

・二足歩行と目玉はどのようにして生まれた?
二足歩行と目玉は、ヒトが前適応を繰り返して、脅威的な進化を遂げたけった。本文で目玉についてはあまり詳しく述べられていない。

・なぜ失敗の進化史というタイトルを付けたのか?-進化とは偶発的に生まれて、必然的に淘汰されていくものだから?
ヒトは失敗作であるという結論をしているから

・これからも人類は進化を続けていくのか?続けていくとしたらどのような形で続けていくのか?
続けていく。おそらくその特異的な知性を用いて、地球の環境を大きく変化させながら。

・人類の歴史をひも解くカギは、ヒトの体そのものと、多くの動物たちの体である。-なぜ動物たちの体?進化とは競争的に行うものだから?
爬虫類、鳥類、哺乳類の動物の体の構造を学ぶことで、人体特有の構造と、なぜその構造が発達したのか?が見えてくるから。

・獣医学の博士である作者はどのような視点で人と動物の進化を見るのか?
同上。あと、動物にはそれぞれ改変がしやすいよい設計図が存在するという考え方(前適応)

 

参考文献


人体 失敗の進化史 (光文社新書)

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